人が何かをしようとする時、そこには成長動機もしくは欠乏動機と呼ばれる動力源が存在しています。
裏を返せば、その動力源がないと人は行動することができないということです。
もし今一歩を踏み出せずに立ち止まった状態を続けているのであれば、この成長動機と欠乏動機の力を借りてみましょう。
成長動機と欠乏動機とは
動機というのは何かを行う理由です。
例えば、眠いけど朝起きるというのは「仕事に行かなければならない」もしくは「時間がもったいない」という動機があるからです。何もなければ、だらだら眠っていることでしょう。
動機と言っても中身は色々です。実は大きく分けて動機には二段階の動機が存在しています。
それが成長動機と欠乏動機です。
人は自分の中にある何かしらの欲求を満たすことが動機となります。そしてその動機によって行動し、欲求を満たそうとするわけです。
成長動機と欠乏動機を詳しく知るには、まずマズローの研究を知る必要があります。
マズローの研究
成長動機と欠乏動機を提唱したのはマズローというアメリカの心理学者です。
マズローは成長動機と欠乏動機を提唱する前に、欲求階層説という研究を発表しています。その欲求階層説は成長動機と欠乏動機に大きく関係しています。
マズローは人間には5段階の欲求があると指摘しています。下の段階にある欲求が満たされることで、より高い段階の欲求が出現してきます。
マズロー5段階の欲求
生理的欲求
食事、睡眠、排せつなど生命を維持するために必要な最低限の欲求
安全欲求
ある程度安定した水準の暮らし
愛と所属の欲求
情緒的な人との関わりがあり、どこかに所属しているという安心感
承認欲求
周りから価値ある存在であると認められる欲求
自己実現欲求
自分の最大限の能力と魅力を発揮したいという欲求
行動には欲求を満たすための動機がある
例えば、お腹がとても空いてると感じている時は、何よりもまずお腹を満たしたい気持ちでいっぱいでしょう。
そんな時に「抱きしめてほしい」とか「あなたがいてくれてよかったと言われたい」などの欲求はまず意識に上りません。
『欲求を満たしたいという気持ち』が行動の動機になるとマズローは考えました。
お腹が空けば、何かを食べようとします。また所属の欲求があれば家族を作ったり就職したりします。
すべての行動には欲求を満たすための動機があることを発見したのです。
成長動機と欠乏動機の違い
マズローは成長動機と欠乏動機のふたつの動機があると言っています。
そのふたつの動機の一番の違いは、対応する欲求の違いです。
人というのは、生理的欲求から承認欲求までの4段階が満たされて初めて、自己実現欲求が起こってきます。
例えば被災して日々の生活が安定しない時に、自分の能力を最大限に発揮して活躍したいとは考えません。
まずは自分の身の安全や周りの安全、安定した生活をするための行動をとるはずです。
成長動機は、自己実現欲求によってのみ起こってくる動機です。
つまり承認欲求までの4段階が満たされていないと成長動機は起こらないのです。そして承認欲求までの欲求を満たすための動機が欠乏動機というわけです。
成長動機と欠乏動機への理解と具体例
成長動機と欠乏動機、これを知り活用することで、今よりももっと豊かな人生を送ることができます。
どのようにこのふたつの動機を使っていけばよいのでしょうか?
欲求を知ることで今の自分のステージを知る
今、どういったことに悩んでいるのでしょうか?
自分の欲求を知ることで、何が今足りていないのかが見えてきます。マズローの欲求階層説のどの段階にいるのかがわかれば、何をまず満たせばよいのかが見えてくるのです。
少し具体例で考えてみましょう。
愛と所属の欲求が高まっている場合
身のまわりの対人関係を見直してみましょう。本当に情緒的な結びつきが希薄になっていますか?
もしかしたら周りが見えなくなっているだけかもしれません。もしくは新しい出会いを求めたくなっているのかもしれません。
承認欲求が高まっている場合
「人から認められたい」という気持ちは大切です。
けれどもそれが強すぎると、そのステージで立ち止まってしまい、自己実現欲求に至れず人としての成長へ向かうことが難しくなります。
もし承認欲求が強まっている時というのは、自分なりに頑張っているけれども思っていたほどの評価を得られない時です。
まずは自分の頑張りを褒めてあげる事、自分で認めてあげることが大切です。
人生を豊かにするには成長動機がポイント
自分が欲求階層のどの段階にいるかを知ると、欠乏動機がはっきりし、行動がとりやすくなります。
すると着実に欲求階層の段階を上の階層へとアップしていくことが可能になるのです。
人生を今よりも豊かにするためには、自己実現欲求に至り、成長動機を自分の中に引き起こすことが大切です。
なぜなら欠乏動機というのは、今の人生のレベルを維持していくための動機だからです。
成長動機を呼び起こすには、欠乏動機を使って一歩ずつ着実に自分の欲求を叶えていくことが大切です。
つまり成長動機がいまいち湧かない時は、何かが足りていない、もしくは4段階目の承認欲求まではしっかりと満たされている時なのです。
足りない欲求が何もないと思うのであれば、成長のチャンスです。ぜひこのチャンスを生かして人生をさらに豊かにしましょう。
成長動機は増減する
成長動機は常に一定してあるものではありません。
例えば、昨日までは成長動機に満ち溢れていたけれども、仕事での大きな失敗によって周りから強いバッシングを受けてしまった場合、成長動機が一気に低下したりもします。
転職などの場合もそうです。成長動機によって転職を考え始めたところ、少しずつ所属から外れることへの不安が掻き立てられて、成長動機が低下するということもあります。
けれども大きなハプニングや自分自身の気持ちひとつで成長動機が低下することがわかっていれば、一時的な低下でおさめることが可能です。
ハプニングの場合は事態をまず終息すれば大丈夫です。
不安などが原因の場合は、不安に感じることを解消すればよいのです。
それができれば成長動機の上下によって人生を豊かにするチャンスを逃すことがなくなるのです。
成長動機と欠乏動機を使いこなそう
成長動機と欠乏動機を理解して上手に使いこなせれば、自分自身を成長させていくことが可能です。
欠乏動機で自分の人生に足りない部分をしっかりと補って、成長動機を使って、さらに良い人生を送るための行動をとることができます。
ぜひ自分の中の成長動機と欠乏動機を見極めてうまく使いこなしていきましょう。