普通に生活していると、ポジティブに生きよう!とかポジティブな考えをしよう!というような言葉をよく目にします。
ポジティブな感情は持って良いけれども、ネガティブな感情は出来るだけ見せないことが良いのかと感じる人が多くいるでしょう。
けれども人の感情はポジティブなものだけで構成されるものではありません。
ネガティブな感情もあるからこそ、人には深みがあるのです。ネガティブな感情の大切さを少し知ってみませんか?
ネガティブな感情とは
ネガティブな感情と聞いて思い浮かぶのはどういった感情でしょうか?
人を憎んだり、嫌いと感じたりするのはネガティブな感情です。また自分を卑下したり、憂鬱になったりするのもネガティブな感情になります。
喜怒哀楽で言えば、怒りと哀しみはネガティブな感情になります。
人に向かって、または自分に向かって湧いた楽しくない面白くない感情は全てネガティブな感情です。
なぜポジティブな感情が良いとされるのか
喜怒哀楽という言葉があるように、人にはポジティブな感情とネガティブな感情というものが元々備わっています。
けれども、ポジティブな感情の方を良しとし、そちらを出すよう呼びかける言葉が多いのはどうしてでしょうか。
その理由はポジティブな感情の抱えやすさ
通常人は、ポジティブな感情を感じている時間は長く続けばよいと感じます。そしてネガティブな感情を感じている時間は早く過ぎればよいと感じます。
それはネガティブな感情を抱えるのは辛く苦しいことであるのに対し、ポジティブな感情を抱えるのは容易だからです。また人の感情というのは周りに伝染しやすいという側面も影響しています。
友達が隣で怒りの感情をあらわにしていたら、出来るだけ早く気持ちをおさめたくなりませんか?
また泣いている人がいたら、なぐさめて泣き止ませたい気持ちになったりするのではないでしょうか。
このようにポジティブな感情に比べて、ネガティブな感情と言うのは自分であれ他者であれ出来るだけ早く去ってほしい、抱えにくい感情なのです。
ポジティブな感情だけ持つことの弊害
ではポジティブな感情だけを持てば世の中は心地よくスムーズに進むと思うでしょうか?
それは違います。
ではポジティブな感情だけを持つとどういった弊害が起こるのか紹介します。
体に症状が出てくる
ネガティブな感情を押し殺し、常にポジティブな感情だけを持つようにすると、たいていの人は体の方に原因不明の症状が出るようになります。
例えば職場でひどいいじめに遭っているとしましょう。
けれどもネガティブな感情はもたないようにしなければなりません。「みんなは何か楽しくて自分をいじめているのだ。
みんなを楽しませているから良いことにしよう」とひたすらポジティブに考えようとします。
そうすることで、本当は泣きたい気持ちや出社したくないといったネガティブな感情が蓋をされ、出る場所を失ってしまい体に影響を及ぼすようになるのです。
よく「学校へ行きたくない」と親に言えない子どもが腹痛を訴えたりするのを知っていますか?
それは大人でも起こりうることなのです。
感情が鈍化していく
ネガティブな感情を押し殺し、無理やりポジティブな感情だけを感じるよう心掛けることで、感情が鈍化していくという弊害も起こります。
ネガティブなことへの感情を鈍化させたいだけなのに、だんだん喜びや楽しみといったポジティブな感情もはっきり出せなくなってしまうのです。
つまり周りから見ると常に無表情な、よくわからない人になってしまうのです。
感情のコントロールが効きにくくなる
ネガティブな感情を感じないようにしたり、表出しないようにすることで、感情のコントロールが効きにくくなるという弊害も起こります。
これまでの人生でなんでもない時にふいに涙が出てしまったりしたことや、悲しいのに涙が出なくなってしまったことがないでしょうか。
ネガティブな感情に蓋をしてしまうことで、自分自身で感情をコントロールできなくなり、思わぬところで感情が爆発してしまい収集がつかなくなる場合があるのです。
酷くなるとポジティブな感情もコントロールを失い、笑いが止まらなくなってしまったり、笑っていたのに急激に悲しくなったりといったことが起こり得ます。
他者の感情に寄り添えなくなる
ネガティブな感情に蓋をして感じないようにしてしまうことで、他者の感情に寄り添えなくなるという弊害も起こります。
自分自身のネガティブな感情を抱えることができない人は、他者のネガティブな感情を目にしたときに逃げ出したくなってしまうのです。
例えば失恋して泣いている友人の隣で、静かに座って背中をさすってあげることができるでしょうか。
ネガティブな感情に蓋をしている人は、友人が泣き出した途端にいたたまれない気持ちでいっぱいになります。
通常、人はネガティブな感情を感じた時にそばにいてくれて寄り添ってくれた人を深く信用します。つまり寄り添えない人とは深いつながりを持つことが難しくなるのです。
ネガティブな感情の上手な扱い方
ネガティブな感情というのは、人に必ず備わっているものです。
生きてきた環境によって表出のしやすさや持続のしやすさは変わりますが、そういった感情を全く感じないという人はいません。
けれども、ネガティブな感情を感じること自体が心の負担となるので、どうしても避けたくなってしまうのが普通でしょう。
押し殺してしまいたくなったり、感じていないふりをしてしまいたくなるのも当然です。
とはいえ、ネガティブな感情を感じないようにすることで起こる弊害は多々あります。
ではどのようにネガティブな感情を扱えばよいのでしょうか。
できるだけ言語化する
ネガティブな感情が湧いてきたときに、まずはできるだけ言語化していくことは大切な作業です。
感情は言語化されることで、整理され少しずつ軽くなっていくものなのです。
友達に泣きながら話をしたあと心が軽くなった経験がありませんか?
人にネガティブな感情を語ることで、重くて抱えるのが嫌だったネガティブな感情も少しずつ小さく抱えやすくなっていくものなのです。
怒りの感情も同様です。我慢していることでより大きな怒りとなっていき、怒鳴り散らしてしまったなんてことありませんか?
怒りも早い段階で言語化しておくことで、それほど大きなものにならずに済むのです。
つまりネガティブな感情を扱いやすくするためには、できるだけ早い段階で言葉にしてしまうことなのです。
ネガティブな感情を感じる自分を受け入れる
ネガティブな感情を抱えにくい理由として、そういった感情を持つ自分を受け入れられないということが挙げられます。
つまりネガティブな感情を感じる自分を受け入れるということも大切な作業です。
ネガティブな感情を感じることがいけないことであるという風に言われて育ってきている人も世の中には割といます。
「男だから泣いちゃいけない」とか「人を憎んではいけません」などネガティブな感情を感じることがいけないというような言葉かけは世の中にあふれています。
けれども感情というのは自然と湧いてくるものなので、そうそう感じないようにすることは難しいでしょう。
つまりネガティブな感情があるのは、仕方のないことなのです。それを理解し、自分自身にそういったネガティブな感情があることを認め受け入れることは大切なことです。
そうすることで、ネガティブな感情は抱えやすくなります。
ネガティブな感情を出しても寄り添ってくれる相手を探す
ネガティブな感情を表出した時に、逃げずに寄り添ってくれる相手を探しておくことも大切な作業です。
もし自分がネガティブな感情を出した時に、周りの人が雲の子を散らすように去ってしまったら、ネガティブな感情なんか出さなければ良かったと後悔してしまうでしょう。
そうなると、ますますネガティブな感情は出してはいけないもの、感じてはいけない物という認識になってしまいます。
怒りや悲しみといったネガティブな感情を出した時に、それを遮ることなく受け止めてくれるような人がそばにいることで、ネガティブな感情はとても扱いやすいものになります。
ネガティブな感情を素直に持つことで生きやすくなる
ネガティブな感情は出来るだけ出さずにポジティブな面だけ見せたいと考えるかもしれません。
けれども、ネガティブな感情は押し殺そうとすればするほど、大きく膨れ上がりコントロールができないような状態となってしまいます。
そうなると感情全てが鈍化したり身体症状となって噴出したりと、余計に生きにくい状態となってしまうものなのです。
ネガティブな感情を感じることは人として当然です。
だから、我慢して大きくしてしまう前に言葉にしていくようにすることが大切です。
そうすることで、周りとの深いつながりが生まれたり、自分自身も生きやすくなったりするでしょう。