『ピグマリオン効果』という教育心理学の原理が、仕事や現場の実践で使えることを知っていますか?
ピグマリオン効果をうまく使える人は、成果を上手に出していくことができます。
そんなピグマリオン効果について紹介します。
ピグマリオン効果について
まずはピグマリオン効果というのが、どういった効果をもたらすものであるのかを紹介します。
ピグマリオン効果とは
ピグマリオン効果とはアメリカのローゼンタールという教育心理学者が提唱した心理用語です。
教師が生徒に期待をすることによって、その生徒の成績が上がるといった効果があることをローゼンタールは突き止めました。
そのためピグマリオン効果は別名、教師期待効果と呼ばれています。
ピグマリオン効果の実験
ローゼンタールがピグマリオン効果を実証した実験があります。
ローゼンタールは、ある小学校の児童に対して知能テストを行いました。
その際、担任教師に
「この知能テストによって、今後成績が伸びる児童がわかります」
と伝えました。
そしてテスト後「今後成績が伸びるのは、この子達です」と、無作為に抽出した児童の一覧を担任教師に渡します。
しばらくしてから再度知能テストを行ったところ、その一覧に入っていた児童の成績が軒並み向上したという実験です。
期待によって成績が上がる
担任教師はローゼンタールの教示によって、本来無作為に抽出されただけの児童に期待をします。
そして無意識のうちに指導を重点的に行ったり、児童に「成績が伸びるそうだ」と伝えたりします。
児童の方は選ばれたことで得意な気持ちとなり、教師の期待に応えようとします。
そういった期待から来る無意識の行動によって児童の成績が向上したということなのです。
ピグマリオン効果が発揮される場面
ピグマリオン効果が発揮されるのは、何も学校の場面だけではありません。
人は、期待をかけられることで、その期待に応えようとするように出来ています。
そのため教師と生徒の関係に限らず、他者からの期待がかかる場面において、ピグマリオン効果は発揮されるのです。
仕事場面においても、上司が部下に期待をかけることによって部下の成長を促す効果があります。
つまりチームでの仕事を行う場合、上手にピグマリオン効果を利用することで、より良い成果を出すことが叶うのです。
ピグマリオン効果の仕事での使い方
期待に応えようとする気持ちを利用して成果を出すピグマリオン効果ですが、実際に仕事の場面ではどのように使うと効果的なのでしょうか。
期待のかけ方に気を付ける
ピグマリオン効果で一番大切なことは、期待感を言葉にすることです。
その際、注意が必要なのは期待のかけ方です。
よくない声掛けの仕方
「君は優秀な人材だから、この程度はできるだろう」という期待のかけ方は相手にとってプレッシャーとなりうる場合があり、危険です。
こういった期待のかけ方は失敗を許されない、へまをしたら見限られてしまうという緊張感を相手に与えます。仕事は緊張感が強まりすぎると、うまくいきません。
効果的な声掛けの仕方
「君は、素晴らしい人材になれる要素を持っている。だから頑張ってみてほしい」という期待のかけ方をすることで、プレッシャーをかけずにピグマリオン効果を発揮することができます。
つまり現在への期待ではなく、その人の未来への期待をかけることが大切なのです。
そうすることで、期待をかけられた相手は、努力をしようとします。そこがピグマリオン効果の狙いです。
個別に声をかける
チームで仕事をするときに、全員がそろっているところでピグマリオン効果を使おうとすると、弊害が起こります。
特に同じ職種がそろっている場合は絶対に個別に声をかけるようにしなければなりません。
というのも、ピグマリオン効果をねらって、ひとりに期待をかけた場合、その周りの人は、自分は期待されていないと感じてしまいます。
ピグマリオン効果には相反する効果であるホーソン効果というのがあります。
ホーソン効果は期待されていないと感じることで、成績が下がってしまうという効果です。
つまりチーム全体にピグマリオン効果を期待するのであれば、それぞれ個別に呼んで期待していることを伝えると効果的です。
全体に言うなら「選ばれた人」であることを強調
チームで成果を出すためにピグマリオン効果を使うのであれば、個別に呼んで声をかける方が良いと言いましたが、全体に言っても効果を発揮する方法もあります。
それは「選ばれた人」であるということを強調する方法です。
チームのメンバーが、意図を持って選ばれたメンバーであること、そして期待していることを伝えることで、チーム全体の士気がピグマリオン効果によって向上します。
適宜期待感を伝える
ピグマリオン効果を使う時、一度言ってそれっきりにせず、適宜期待感を持っていることを伝えることも大切です。
特に自分の仕事にあまり自信がない人にとっては、その言葉がけが励みとなります。
チームで仕事を始める時点で、一度声を掛けたら、しばらくは様子を見ましょう。
おそらく大方の人は、期待感に応えようと自分なりに成果を出すべく努力をします。
ただ努力というのは無限に続けられるものではありません。
少し息切れしてきそうだと感じた時に、再度ピグマリオン効果を使うと効果的です。
信頼関係は大切
ピグマリオン効果を発揮するためには、お互いの信頼関係が大切です。
例えば、自分がピグマリオン効果を使われる立場であるとしましょう。
信頼している上司から「期待している」と言われるのと、日ごろから嫌だなと感じている上司から「期待している」と言われるのでは気持ちが違うのではないでしょうか。
もしピグマリオン効果を使って仕事で成果を出したいのであれば、普段からチームのメンバーとの信頼関係はしっかりと築いておきましょう。
不得手な部分への期待をかけない
ピグマリオン効果は、期待をすることで相手の能力を発揮してもらう方法です。けれども、どんなことでもうまくいくかといえば、そうではありません。
例えば集中力を継続することが難しい人に「君は集中力が発揮できる人だ」と期待しても、相手は頑張ろうという気持ちになりづらいものです。
得意なことでなければならないことはないですが、あまりにも不得手なことへの期待をかけるのはやめておきましょう。
フィードバックを大切に
ピグマリオン効果によって、仕事で成果が出せた時には、フィードバックが重要となります。
ここできちんとフィードバックしておくことで、次にチームで仕事をするときに、ピグマリオン効果が持続することになるからです。
大人であっても人から評価され褒められることは嬉しいものです。
また期待に応えられたという達成感も得られますし、自信にもなります。ピグマリオン効果を使ったら、適切なフィードバックまで忘れないようにしましょう。
ピグマリオン効果でを成功させよう!
ピグマリオン効果は、誰を傷つけることもなく、プレッシャーを与えるでもなく人の能力を最大限に発揮できる素晴らしい方法です。
ただし使い方を間違えてしまうと、思ったような結果とは真逆の結果となってしまうことがあるので、注意が必要です。
ピグマリオン効果を使うためには、日ごろからの信頼関係の構築が大切です。
その時だけ期待して能力を発揮させようとしてもうまくいきません。また、あまりにも能力とかけ離れた期待をしても、うまくいきません。
つまり相手がどういったことが実際に得意なのかを知っていることも大切です。
普段からの関係がきちんとできていてこそ発揮できるのがピグマリオン効果です。