目標が達成出来ない、すべてがうまくいかない、最近充実感を味わっていない。
そんな方は、目的や目標を目指しているようで、いつの間にか無駄なことに力を注いでしまっているのかも知れません。
2014年に発売されたグレッグ・マキューン氏の著書「エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする」では、そんな方にこそ知ってもらいたい、本質的なもののみに力注ぐ思考法、そのメソッドが紹介されています。
もしも現状に無力感を感じているのなら、「エッセンシャル思考」をとりいれてみてはいかがでしょうか。
エッセンシャル思考とはどのようなものか
さて、エッセンシャル思考とはどのようなものなのでしょうか。
この思考のテーマは「より少なく しかしより良く」ということです。
自分にとって一番大切なものを見極め、それ以外のものを捨て、自分のエネルギーを本当に大切な事のみに注力するという考え方です。
情報は増え続けている
「世の中の大半のものはノイズである 本質的なものはほとんどない」
ドイツのインダストリアルデザイナー ディーター・ラムスの言葉です。
私たちは情報社会の中で、日々いろいろなことに翻弄され生きています。
スマホやパソコンを開けばニュースやメールにエンターテイメント、山積みの仕事、家庭やプライベートの遊びや考え事、その数は増え続けています。
私たちの生活のなかで自分にとって、または自分の目的にとって本当に大切なことはほんの一握りしかないのです。
2対8のパレートの法則
パレートの法則と呼ばれる有名な法則をご存知でしょうか?
「経済活動において、全体の数値の大部分は、全体を構成するもののうちの一部の要素によって生み出されている」
- 売り上げの8割はたった2割の優良顧客から生み出される
- アウトプットの8割はその日の業務時間の2割で実現している
- 所得税の8割は、課税対象者の2割が占めている
パレートの法則はビジネスにおいても、生産性を効率よく上げるために重要な法則です。
重要な少数は些細な多数に勝る
重要な要素が見極められなければ、努力したのになかなか成果が得られないという経験に繋がってしまうかもしれません。
人間の時間も労力も有限であり、とても貴重なものです。
無駄なことに時間を割いている暇はありません。大切なものを見極めてそれに注力すれば、最大の成果が得られる。
重要な少数は些細な多数に勝る、それが「エッセンシャル思考」の考え方です。
非エッセンシャル思考がもたらす害
なぜ重要なことのみに集中して取り組むべきか、というのはそうでないこと(「非エッセンシャル思考」)のマイナス面がとても大きいからです。
- 与えられたことを全て行おうとする
- こまごまといろいろなことに手を出し、結果放置してしまう
- 反射的に「やります」「出来ます」といってしまう
- 全部をこなす方法を考える
これらが「非エッセンシャル思考」の人の特徴です。
与えられたことを全て行おうとすると、すべてが中途半端になり成果を挙げられず、達成感も味わうことが出来ません。
一方で重要であることを選択し力を注いだ人は、自分で決めたことに充実感を持ち、集中して取り組むので成果も挙げることが出来ます。
トレード・オフの原則の働き
とはいえ何かを「捨てる」、与えられた指示に「ノーと言う」ことは勇気がいることです。
しかし、多くを手にしようとすることは不可能であり、全てを手に出来るというのは幻でしかありません。そこにはトレード・オフの原則が生じるからです。
トレード・オフの原則とは、一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態・関係性のことをいいます。
多くのことを行う人は決して全てを手に入れられているわけではなく、何かを中途半端に得て、何かを中途半端に捨てているだけなのです。
もし、あなたが達成したい目標や成果、叶えたい姿があるならば、そのために力を注ぐべきなのです。
成功のパラドックス
それでも仕事もどんどん振られ、そういうわけにもいかないという方もいるでしょう。
「エッセンシャル思考」には成功者のパラドックスという言葉が出てきます。
優秀な人は成功しますが、成功するほど頼られる人になり、仕事量が増え、結果すべてが中途半端になり失敗をしてしまう、といったものです。
これは社会に出ている人ならば、誰しも思い当たる節があるのではないでしょうか。
優秀であるが故に失敗してしまう、
このパラドックスから抜け出すには、やはり自分の目的にとって必要なものを選び取り、その他のものは勇気を持って捨てる、ということが必要になってくるのです。
「エッセンシャル思考」を身につけるには
ではこの思考をどのように身につければ良いのでしょうか。それには3つのステップが必要となります。
- 見極める技術
- 捨てる技術
- 仕組み化する技術
見極める技術
考える時間
本質的なものを見極めるためには、まず考える時間が必要です。考える環境は、何かをしながらだったり、仕事の合間にぼーっとしながら、という状態ではダメです。例えばデスクの上に紙とペンだけを置いて、その時間は考えることだけに集中するようにしましょう。
この考える時間というものはとても大切で、マイクロソフトのCEOビル・ゲイツは毎年「think week」という1週間1人で考えたり本を読む時間を設けていました。静かな環境で、考えることに集中することが大切なのです。
問題を明確化する
考える時間を確保したら、そこで何が大切か自問自答し、問題を明確化します。その問題は解決すべきものなのか、解決したとしても意味のないものなのか問います。「エッセンシャル思考」では問題のうちの90%が解決しても意味のない問題だといっています。
読書をする
読書もまた見極めるために大切なものです。一つの組織にずっと属していると、常識が凝り固まり、視野が狭くなっています。無駄なことを無駄と思えないのは、自分の思っている常識が世間の非常識になっている可能性があります。
それらを壊してくれるのが「読書」なのです。
捨てる技術
本質目標を持つ
何かを捨てるためには、本質目標を持つことが大切です。「エッセンシャル思考」での本質目標は完全に明確なものをいいます。
「何年か後には事業を拡大出来ているようにする」などではなく、「5年後に、3店舗増やし、○○サイトにおいて該当地区で1番になる」と言ったように具体的に明確にする必要があります。
目標が明確であれば、その目標のために必要な小目標も明確になり、それに貢献しないものを捨てる時に迷いがなくなります。
断り方を学ぶ
特に細部まで明確にすることで、無意味な仕事を振られた時に断ることも可能になります。
捨てることがいくら大事であると知っていても、サラリーマンだと頼まれたことを断るというのは不可能に近い時もあります。
その場合に、自分の予定を細部まで決めておくことによって、今これだけ忙しい、目的を達成するために、これを実行しないといけないが、今頼まれる仕事はそれよりも効果のあるものなのか、と問うことで、遠回しにノーと言うことが出来ます。
しくみ化する
見極めること、捨てることが出来たら、それを考えなくても出来るように習慣化します。
見極めることも捨てることも考えるために労力を使うので、何か新しい問題が現れる度に繰り返していれば、そのために他のことが考えられなくなります。
習慣にしてしまえば、考えずに同じことが出来、他のことに労力を使うことが出来るのです。
見極める基準を明確に決め、ルール化しておくことが大事です。
エッセンシャル思考のデメリット
「エッセンシャル思考」にもデメリットはあります。
ひとつのことに注力することは、それがうまくいかなかったときのリスクもあります。また考えるにはそのための時間も必要になります。
例えば新入社員や、社会経験の浅い人だったらどうでしょうか。
自分の中の判断材料が、本などでいくら常識を得たとしても、少なすぎるということはないでしょうか。
アメリカのソフトウェア開発者のマーク・アンドリーセンは、「スキルを身につけるためには5年から10年が必要だ」と言っています。
そもそも、「人生はまわり道するから面白い」「不必要と思えたことがのちのちの人生で役に立った」など、現在の自分にとって有益とは思えないことも、捨てる必要はないのではないか、と考える人もいるでしょう。
やる事が多すぎるに人にエッセンシャル思考はおすすめ
物事に優先順位をつけること、目標を明確化することは、人生に行き詰った時に自分の指標を整理するうえで、多くの人にとって重要なことではないでしょうか。
特に、なりたい姿にいつまで経ってもたどり着けない、やることが多すぎる、判断し続けなければならない、仕事も家庭も忙しすぎて神経が摩耗してしまっている。
そんな方には今すぐに重要ではない何かを手放す勇気が必要なのです。
まとめ
最も大切なことは、常に自分の目的のための問いを忘れないことです。
人生の目的は何か、そのために今何をすべきかを問い、その答えを常にバージョンアップさせていくことが大切です。
そうすれば、目標達成のみならず、無力感から解放され、今よりももっと良い自分の人生を歩む事ができるのです。
参考文献
・グレッグ・マキューン「エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする」 かんき出版 2014